【ザベリヤ村の攻防戦】 作:Asa様

【仕事前の茶番】

冒険者の宿、お昼過ぎ。
〈領収書 スキル『祝福』 1400sp也〉

「えー・・・みんな、ごめんなさい。教会に恵まれない子供が増えてるらしくて、寄付のつもりで・・・」
「俺らも恵まれてないんだが」
ノーミルの出した紙切れは、ヒルベルトによってビリビリに破り捨てられた。

ヒルベルトとギー・ギャロワが、テーブルに銀貨袋を置いて話し合ってる。
「次のツケの支払い、どうしましょうか・・・」
「前の依頼で手に入った、トンカチと召喚術入門を売ればいいんじゃないか?使い道もキーコードも無さそうだし」
「・・・キーコードって何です?」
本は100sp、トンカチは25spで売れました。現在の一行の所持金、ツケも払って165sp。

「さてノーミル。言い訳はいらないから、オトシマエつけような?」
ヘー・イッシが笑顔でノーミルを見ている。他のみんなも見てくる。
困ったので宿の親父さんを見ると、親父さんは一枚の張り紙を出してみた。
「ちょうど今、入ったばかりの仕事がある。依頼人も居合わせてるから、話だけでも聞いてみるか?」

報酬は800sp。急ぎの依頼で、自分たちが受けなければ他の宿にでも回すという。
場所はリューン西方の山々の村、馬車で2日と結構な距離。
依頼は行方不明者の探索と、突如連絡が取れなくなった隣村への調査。
急を要する仕事であり、自分たちも資金的に困っているため、依頼を断る理由は無かった。

今では、依頼を受けたことを少々後悔している。予想していた以上の大きな仕事・・・そして、

これ以上、我々に逃げ場所は無いからだ。

 

【ザベリヤ村からの依頼】

「ここがザベリヤ村・・・か?それにしては物騒な作りだな」
リューンを発って2日目。馬車の中でアンゲロが言った。
「ここら一帯が戦乱紀だった頃にできた村でして・・・」
馬車を操っていたザベリヤ村からの使いスミスと、同じく村からの使いドノバンが答える。
彼が言うには、この村ができたのは100年ほど前の話。
当時は最前線の要塞として築かれたのが最初であり、物々しい城門や、石造りの高く頑強な防壁はその頃の名残なのだそうだ。
門を潜れば、農村らしい田園や家屋・・・に混じって、やはり物々しい建物がちらほら。
一行はスミスに案内されて、村長宅へと向かう。依頼について、最終的な話し合いだ。

「・・・ええ、では危険手当として、報酬に300spの増額を」
ザベリヤ村の長、マクブライト村長との交渉はすぐに終わった。
歩いて一日の隣村、急に連絡の途絶えたカツラギ村への使い。
それと、その村へ様子を見に行き、帰らなくなったザベリヤ村の5人の若者の捜索。
前金として400spを受け取り、一行はすぐさまカツラギ村へ向かうことにした。
・・・のだが、村長に呼び止められた。
「もし、私の娘を無事連れて帰ってくただされば、報酬をさらに増額します」
カツラギ村からの連絡が途絶えた際に、調査に向かったザベリヤ村の5人の若者たち。
村長の娘はその中のリーダー格であったという。
「村長である以前に、私も一人の父親なのです。どうか、娘を」
「悪いけど、その申し出は受け入れられないな」
ヘー・イッシが即座に答えた。
「俺たちはすでに村人を捜し出す依頼を受けたんだ。そんな申し出が無くても、娘さんが見つかれば必ず無事に連れ帰るさ」
そして一行はスミスを案内役として、カツラギ村へと向かう。

「あ、コカの葉発見。ちょっと摘んでいくね」
ステファニーが先だって探索を行いながら、一行は山道を歩いていく。
ザベリヤ村とカツラギ村は一本道で繋がっている。
途中に休憩用の山小屋がある、一日を通して歩く距離。
日も暮れた頃に、一行は山小屋に到着した。
疲れたスミスが山小屋へ向かおうとしたのを、アンゲロが遮った。
「・・・様子がおかしい」
気配はする。だが、いやな予感がする。ヒルベルトが一人先に小屋へ入る。
「そこだっ!」暗闇の中、ヒルベルトの居合斬りが炸裂する。
山小屋に潜んでいたのは、武装したオークが総勢4匹。狼狽えるスミスをよそに、一行はオーク達と対峙する。

 

【カツラギ村の惨劇】

結果からいえば、オーク達を難なく倒し、一行は一晩を無事に過ごし朝を迎えた。
だが、このまま依頼を続けるどうかを決めかねていた。オーク達はかなりの武装をしていたのだ。
「スミスさん。貴方は先に村に戻った方が良い」
ギー・ギャロワはそう決断した。もしかしたら、自分たちの手におえるヤマではないのでは、と。
だが、怯えながらもスミスは断った。自分一人がおめおめと逃げ帰っては、村に合わせる顔がないと。
そして一行はより慎重になりながら、カツラギ村へと向かう。

ほどなくして、一行はカツラギ村の・・・その手前に到着した。
足を止めたのは、村が静かすぎるのと、離れているに異臭がするからだ。
「まともな人間が住むにはとても耐えられそうにないわ・・・」
ステファニーが口元を抑えながら言った。一行は気配を静めて村の中へ入っていく。
するとまもなく、2匹のオークが何かを引きずりながら、村から出てきた。
引きずっているのは・・・人間!一行は思わず駈け出した。
まだ生きているかもしれない。オークを即座に倒し、引きずられていた者に近づく。
・・・すでに息絶えていた。体中に酷い傷を受けた、ザベリヤ村の若者の一人だった。
この村で何が起きたか、もう既に理解できた。カツラギ村は、オーク達に占領されたのだ。

荒れ果てた村を調べ、見つかったのは薬棚にあったクグモイ草。
それと、穴蔵に入れられた大量の人間の死体。
武装したオークの集団。昨日であった4匹どころではない。少なくとも、10匹以上はいるだろうか。
さらに教会の中には、巨大なトロールが2匹、オーク達に飼われていた。
そして、東側の離れた民家で人間らしき姿が見えた。オークに気づかれないように、一同は急ぐ。
そこにあったのは、軒先に吊るされ、無残に殺された死体が2つ。
スミスが言うには、この二人もザベリヤ村の若者らしい。彼からは怯えが消え、怒りと悲しみで溢れている。
その時、家の中から女性の悲鳴が聞こえた。まだ一人、生きている。
窓から様子を見ると、中にいたのオークが一匹と、それに怯える女性。
家の外から、オークはステファニーのスリングで撃ち抜かれると、その場に倒れた。

中にいた女性は、ザベリヤ村から来た若者の一人で、村長の娘のメリルだった。
みんな殺された。ザベリヤから来た若者も、自分ともう一人以外は惨い仕打ちを受けたと。
メリル本人も、手足に枷を付けられ、心身共にひどく傷ついていた。
ノーミルが枷を壊し、着ていた上着を脱いで、メリルに着せた。
「あなたは生きて・・・生きて村に帰るのよ」
一行が村を出ようとした時、オーク達の歓声が轟いた。村には、何十もののオーク兵が整列していた。
その中心にはオーク達の首領、オークロード。奴らはザベリヤ村に向けて行軍するつもりだ。
奴らはカツラギ村を襲った。次はザベリヤ村だ。

 

【ザベリヤ村への帰還】

一行はスミスの案内で、山中の獣道を進んでいた。
奴らより先にザベリヤ村へ向かうなら、この人数なら獣道を通った方が速いという。
「・・・待て!」道中、ヘー・イッシが何かを見つけた。人間の死体だ。
メリルが言うには、カツラギ村の異変を察した若者の一人が、先に村へ逃げ帰ったという。
持ち物から、死んでいるのはザベリヤ村の若者だと判明した。死因は弓矢、それも毒・・・。
「がっ!?」 ヘー・イッシが弓矢で撃ち抜かれていた。
山中、森の中。狙撃手が狙っている。すぐさま一行は臨戦態勢に入る。

「索敵は俺がやる。ステファニーはスリングで奴を撃ってくれ!」
徒渉る神の目を手に持ち、周囲を調べるアンゲロ。
毒矢を回避しながら、こちらも敵に攻撃することはできた。だが敵はまだ倒れない。
森の奥へ逃げる敵を追うが、仕掛けられたトラバサミの罠に、ヒルベルトがかかってしまう。
ギー・ギャロワとノーミルが回復を行いながら、罠はヘー・イッシの盗賊の手で解除する。
辛くも狙撃手を倒すことに成功するが、時間も体力も大きく消費してしまった。
一行はオーク達より早く、ザベリヤ村へ帰還することができた。

物々しいザベリヤ村の防壁門。その前にはマクブライト村長と、騎士と思われる男がいた。
先にスミスが疲れ果てたメリルを連れて、村の中へと入っていく。
冒険者一行がカツラギ村での惨状を伝えると、村長は震えていた。
今しがた此処に駆けつけた騎士ウェリントンが言うには、オークの集団は遥か遠方から来たもの達。
数年前に起きた遠方の大戦争で生き残った妖魔軍の残党が、この地方にまで逃げ延びたこと。
そして騎士団の怠慢により、ここら一帯の村には妖魔達の報告がされていなかったという。

いち早く村を捨て、非難を勧める騎士ウェリントン。
だがマクブライト村長は判断を迷っていた。この村をオーク共に渡したくない。
それにこの村は元々は戦乱紀の要塞として作られた村。
しかるべき準備さえあれば、今でも容易にこの村は要塞と化し、オーク共に使われてしまうと。
こんな大事になってしまい、村長は恐る恐る冒険者に尋ねると、ヒルベルトが言った。
「ハッキリ言ってくれないか? 俺たちに『どうかオーク共をぶちのめして下さい』ってね」
冒険者一行も、オーク共に激しい怒りを覚えていた。カツラギ村からメリルを助け出した時から、皆が覚悟を決めていた。
ウェリントンが騎士団を連れでここに戻ってくるまで、冒険者と村人だけでオーク達と戦うことを決めた。

 

【ザベリヤ村の攻防戦】

「おう、コイツを使ってよぉー 奴らに石をブチ込んでやりなぁ!」
村一番の力持ち、鍛冶屋のブーンは投石機を用意してきた。
この男と、一行と行動を共にしたスミスと、冒険者の宿に来たドノバン。村人で戦えるのはこの3人。
村長宅で作戦会議をしながら、冒険者は村の癒し手リュッケの治療を受けている。狙撃手との戦いの傷も回復できた。
他の村人たちは、村の中心にある教会へ全員を避難させている。

作戦は門を守り、オーク共の進行を止める。破られたら教会まで避難し、できるかぎり時間を稼ぐ。
門の左右には塔があるため、そこから弓矢でオーク共を撃退し、遠方から投石機で援護する。
残りのメンバーで門を押さえ、最終的に騎士団が助けに来るまで時間を稼ぐ、のだが。
ここで一つ問題が浮上する。弓矢を扱うにしろ、門を押さえるにしろ、それなりに力が必要となるのだ。
「投石機はステファニーに任せます。左右の塔は、私とノーミルが担当しますが・・・うまく行くでしょうか」
ギー・ギャロワの作戦によると、左右の塔には回復のできるメンバーを置きたいという。
「大丈夫よ、神の祝福は伊達じゃないわ。」
ノーミルが呪文を唱えると同時、ギー・ギャロワも迅速なる風を唱えた。そして配置につき

門の攻防は、予想以上に持ちこたえることができた。
ステファニーが投石機による攻撃を何度も成功させ、門への被害は最小限になっていた
塔で弓矢を扱うギー・ギャロワ、ノーミルにはオーク達からの反撃もやってくるが、その攻撃にも耐えた。
このままいけば、と思った矢先。ギー・ギャロワのいる塔に、大岩が投げ込まれた。
オーク共はトロールを従えていた。気付いたころには既に、ギー・ギャロワは大怪我を負い、教会へ担ぎ込まれる。
片方の塔が機能しなくなった途端、オーク共の攻撃が激しくなる。門が破られるのに時間はかからなかった。
時間を稼ぐため、残りの冒険者5人と村人で、オーク共と対峙する。

第一陣だけで10匹以上。何度倒しても、次のオーク兵が間髪入れずに襲ってくる。
一人欠けた冒険者一行だが、攻撃が得意な鍛冶屋ブーンの奮闘もあり、これを辛うじて切り抜けた。
休む間もなく、倍以上の数による第二陣が襲い掛かる。後方のオーク兵達による弓矢も降り注ぐ。
時間こそ稼げたものの、気づけばアンゲロ以外は重傷か、戦闘不能状態になってしまっていた。
「限界だ!教会の中まで退却するぞ!」
一行は教会の中へ立て篭った。そしてこれ以上、もう何処にも逃げ場は無い。

 

【礼拝堂の血戦】

教会の門を破ろうと、オーク軍は破壊槌を撃ち続けている。
その間、ギー・ギャロワとノーミルが魔法を唱え、かろうじて体力を回復させる。
治療をする間もないからと、癒し手リュッケからは、アルゲビの薬草と傷薬2つ、さらに魔法薬をもらった。
騎士団がたどり着くにはまだ時間がかかる。教会の奥の隅で、村人たちが懸命に神への祈りを続けている。
「これで全滅したら、宿屋の親父にどやされるな。溜まったツケが払えなくなるからな」
こんな時にでもツケの話をするヒルベルト。だが表情は、真剣そのもので武器を構える。
「もうあの扉も持ちません・・・全員、覚悟はいいですね?」
ギー・ギャロワが迅速なる風を唱えた直後。扉が破られる。

すぐさま6匹のオーク兵がなだれ込んでくる。
先陣切ったオークを一体、ヒルベルトの居合斬りで切り伏せた。
続けざまに侵入するオーク兵。一際武装したオーク兵も紛れていた。
そのオークの穿鋼の突きでノーミルが重傷を負うが、武装オーク兵を皆で協力して倒した。
だがオークの進行は止まらない。何度倒しても次が来る。
2体目の武装オーク兵にステファニーがやられ、ノーミルもアンゲロも倒れてしまう。
オーク兵は10匹以上もいる。冒険者一行は攻撃するのをやめ、防御に専念した。

教会に入り込んだオーク兵は20匹を超えた。
迫りくる攻撃を防御し、回避し、村人の支援で弱ったオーク兵を倒し。
戦闘開始前に唱えた迅速なる風の効果が切れもなお、ヒルベルトとヘー・イッシは倒れなかった。
ヒルベルトが居合斬りを使い果たしたところで、教会の外からオーク達の叫び声がした。
騎士団がようやく来たことにヒルベルトが気づいたのは、リュッケに回復を受けた後だった。

「こ、今回ばかりは死ぬかと思ったわ・・・」
ステファニーが治療を受けてながら言った。他のみんなはノーミルの癒身の法を受けている。
「私ももう、祝福一回分しか精神力残ってないわよ」
全員の体力をある程度回復させたノーミルが言った。
「・・・なぁ、ノーミル。あと一回分、祝福が使えるんだよな?」
ヘー・イッシが村のはずれを見やる。オークロードと他2匹が逃げ延びようとしていたのが見えた。
「私も、これで最後の呪文です。追いますよ!」
ギー・ギャロワが迅速なる風を唱え、一行は最後の戦いに挑んだ。

森の中。一行はオークロードと、武装オーク兵二体に追いついた。
「ニンゲン・・・シネェ・・・!」オークロードは人間の言葉を喋り、剣を抜く。
アンゲロはノーミルから預かった賢者の杖を振りかざす。
そして焔の網で取り巻きの兵を呪縛し、他の仲間たちで瞬く間に武装兵を倒す。
「年貢の納め時だ、覚悟しろ!」
アンゲロの唱えた炎の網が、オークロードを捕らえる。最後はあっけない幕切れであった。
短く、しかし激しい攻防戦の終わりを告げる、オークロードの絶叫が山々にこだました。

 

【終幕】

カツラギ村の村民、そしてザベリヤ村の若者達の埋葬作業が終わった。
依頼の後始末を行い、村長からは報酬の残り700spを受け取った。
さらにリュッケからは、一族に伝わる秘蔵の技術という「白銀の癒し手」というスキルを貰い受けた。
そして我々は行きと同じく、スミスの操る馬車に乗ってリューンに向かう。
拾うと緊張から解放された我々は・・・馬車の上で、眠りこけている。
これが、カツラギ村とザベリヤ村を襲った悲劇と、それを救った英雄達の話。

「みんなレベルアップしたね」「俺とステファニー以外はな」
その後リューンに帰ってから、ステファニーとヒルベルトが何かボヤいていたとか。


引き継ぎ金収入支出ツケ合計
金額(sp)1540+1100(+125sp)-1400-1001265
 
 
スキルアイテム召喚獣
白銀の癒し手コカの葉、クグモイ草、アルゲビ、傷薬×2、魔法薬
トンカチ・召喚術入門(売却して125sp)





トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2014-09-18 (木) 22:06:01