ヒルベルト

ヒルベルト †

【参考】

【Face】
作者：Ask　様
URL：http://www.ask.sakura.ne.jp/

設定 †

　カウンター席の向こうで食器を磨いていた宿の亭主が、不意に声を掛けた。
「お前さんは頭も切れるし、顔立ちもいいし、人間嫌いってわけでもなさそうだ。なぜ、堅気の職業(しごと)に就かない？」
金のためだと即答しかけて、ヒルベルトは逡巡した。本当にそれだけだろうか？

盗賊に身を堕とすことは、たやすい。そうしないのは、剣は己の心身を鍛え律する手段だと教わったからだ。
他の騎士達がしているように、出世のために人を踏みつけにするような真似だけはしたくなかった。
だから吟遊詩人の歌う、冒険者という身分に興味を持ったのだった。

ヒルベルトはジョッキの中身を飲み干すと、ため息をついた。エールは好きではないが、過去を洗い流してくれる。
「……ま、言いたくなければそれでもいいさ。素性の知れない冒険者なんぞ、ここじゃあ珍しくもないからな」