夜が明けたばかりでまだ辺りが薄暗い内に、ノーミルは宿を発った。
早朝からの仕事は少し辛いが、テーブル山にある賢者の塔の研究機関で呪文書を買った為に資金難であり、仕事を選ぶ余裕なんて無かった。
最も、一人用の依頼なので他の仲間はまだ寝ていたりするのだが。
そして、ノーミルは昨日打ち合わせした通りに、依頼人と合流した。「おはようございます。晴れてくれて助かりましたよ。二人だし、身軽に動けます」

「ええ、これなら昼過ぎには到着出来そうだし、出発しましょう」

 依頼人は、サリマンという色黒の痩せた男だ。
彼は、遺跡で死んだ民俗学者である父の遺体を回収することになり、道中の護衛と回収作業の手伝いを依頼していた。

「……久しぶりだなあ、この道を行くのも。用が無ければ、町の外なんてそんなに出ませんからね。ああで

も、あなたは冒険者ですから、そんな事もないのかな?」

「そうね。やっぱり街の外に出る事の方が多いわ。例えば……」

 と、街道を歩きながら自身の冒険譚を話していくノーミル。
依頼人であるサリマンがラッツネストに冒険者として所属する事を希望している事もあり、話は弾んでいった。
キーレでの蛮族との戦いや下水道にいた魔法生物、自分達を調理しようとしてきたレストラン等と、普通の人には想像もつかないような経験をした話は大好評だった。
また、サリマンがベニマリソウという食用の野草を見つけて採取するという思わぬ収穫もあり、旅は順調に進んでいたのだが……。

「あっ……蛇だ。結構大きいですし、困りましたねえ。どいてくれないかな……」

 街道を離れて目的地であるバーセリック遺跡への道を進んでいたら、体長1mほどの大きな蛇が道の真ん中に居たのだった。
毒を持たない種とはいえその大きな身体で締め付けられたら只では済まないが、かといって道を外れれば深い森の中なので蛇を刺激せずに進むのは危険だった。
だが、冒険者として経験を積んだノーミルからすれば大した敵ではなかった。

「下がって、私がやるわ」

 ノーミルはメイスを構え、勢いよく飛び出した。
飛び出した勢いを乗せたメイスは蛇の身体を掠っただけだが、それでも鱗だけでなく僅かな肉まで削ぎ落としていた。
続く、大きく振り被った二撃目が蛇の尻尾の先のほうを叩き潰す。
最後の抵抗とばかりに蛇が脚に噛みついてはきたが、ノーミルはあっさりと振りほどくと蛇に止めを刺してその死体を靴で道脇の草むらに押しやった。

「……ふぅ……どうもありがとう、助かりました。」

「いえいえ、無理を言って追加報酬でシッケトリ石まで貰いましたし、これくらいはしないと……」

 癒身の法で傷を治療してから再出発し、程なくしてバーセリック遺跡に辿り着いた。
遺跡は調査され尽くされた上で聖北教会によって浄化されていた為、何事もなくサリマンの父が死んだ落とし穴を発見した。
底にびっしりと槍が立てられたその落とし穴は、白骨化してない死体を回収しようとしていたらもっと人を雇う必要がありそうだ。
サリマンがすぐに父の死体を回収しなかった理由を再確認しつつ、ノーミルは回収作業の準備を始めた。

 回収作業はサリマンがノーミルの予想以上に器用だった事もあり、滞りなく終わった。
後は、サリマンが落とし穴の底から上ってくるのを待つだけだったが、サリマンはカンテラを掲げて上を見上げていた。

「……ああ、すみません。天井を見ていて……あなたも、よければ見上げてごらんなさい。足元には気をつけて」

 見上げると羽と角の映えた不思議な生き物が、色とりどりの石片を使った状態のいいモザイク画で描かれていた。
サリマンの話だと、昔信仰されていたという現世にさまよっている魂を次の生に導く神様の壁画らしい。

「……父はもしかしたらこれをたまたま発見して、興奮してつい、足を滑らせたのかもしれませんね……違うかもしれないけど、でもあの人らしいです」

 一仕事終え、遺跡を出た頃にはもう夕方で、当初の予定通り遺跡の入り口近くで野宿することになった。
干し肉とベニマリソウの塩スープを夕食にし、交代で見張りをする為、サリマンより先に眠るノーミル。
しかし、どういう訳か交代の時間よりも少し早くに自然と目が覚めてしまい、かといって二度寝するほどの時間でもなかった。

「もう眠くないのでしたら、良ければ一杯どうですか。安酒だけど、温まりますよ」

 と、サリマンに勧められたのでノーミルは晩酌に付き合う事にした。
酒が入っていたせいか話が進み、ノーミルは自分が冒険者になった理由を話していた。
そして、一通り話し終えると、サリマンの手が細かく震えていた。

「思い出していたんです。……昼間の事。あの蛇の事……大きな蛇でしたね。ああいうの、よく相手にされるんですか?」

「うーん、動物相手に戦う事は余りないわ……そういう依頼の張り紙はいくつか見た事があるけど……」

「……そうですか。しかしあなた、堂々としていました。さすが冒険者なんですね……もしあれを、自分が相手にしていたらと思うと。……はは。この様です」

 その勢いで、遺跡での回収作業の時に感じた恐怖まで話し出すサリマン。
平然としているように見えていたが、やはり恐怖はあったらしい。
とはいえ、酔っているせいでもありそうだったので、ノーミルはサリマンから酒瓶をさり気なく遠ざけた。

「とにかく私は決めたんです。何をと言って、こういう自分を否定しない事をね。嫌な想像をしてしまうのは、最悪を予想して用心が出来る……って事だと思うんです。今回の旅だって、そう決めて、自分なりに腹括って臨みましたよ。こんな有様ですけどね」

 と、言った所で後が続かなくなるサリマン。
テンションが落ち着いてきて我に返った所で自分の言ってたことを恥ずかしく感じて落ち込みだした。
そんな彼をノーミルはなだめて、そのまま交代の時間だと告げて眠らせることにした。
そして、依頼は何事もなく終わり、ラッツネストに新たな冒険者が加わるのだった。


引き継ぎ金収入支出ツケ合計
金額(sp)1690+650-1000-1001240

※シッケトリ石は売る以外に使い道が無いので売却しました。

スキルアイテム召喚獣
陽光の恵みベニマリソウ





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Last-modified: 2014-08-28 (木) 22:26:52